■サブマシンガン
サブマシンガン(SMG)の定義は機能面、法律面など多方面で区別され、諸説分かれるが、基本的には45ACPや9x19mm弾などのピストル弾を連続発射するオートマチック銃で、多くの場合フルオート射撃に耐えうるために銃床を設け、銃身もピストルよりも長く厚みがあるのが一般的である。また、弾薬の消費量が増加する事から弾倉も20-30発前後とアサルトライフルと同等の容量になる。
誕生の仕方も様々でピストルにフルオート機能を装備し発展したものから、ライフルを小型化したデザインで設計されたものなど様々であった。
サブマシンガンの運用思想は第一次世界大戦中に生まれた。当時は互いの構築した塹壕を攻略する戦闘が歩兵戦闘の主たるものであったが、歩兵の小火器はボルトアクション式ライフルが一般的であった為、塹壕突入後は銃剣での戦闘を余儀なくされた。この為兵士達は近距離で弾丸を連続発射できるオートマチックピストルに大容量の弾倉を装着して戦いに望んだ。第一次世界大戦ではドイツ軍の使用したスネイルマガジン(ドラムマガジン)付きルガーP08などが有名である。
そんな中、ドイツではじめて本格的な歩兵用マシンピストル(サブマシンガン)ベルクマンMP18が誕生する。MP18はルイス・シュマイザーの設計したマシンピストル(サブマシンガン)でシュマイザーは以降ドイツ軍のサブマシンガンに大きく関わっていく。
この頃これらの銃の名称は機関拳銃を意味するマシンピストルという呼称が使用されていた。サブマシンガンはその後スペイン内戦などで威力を実証し第二次世界大戦が開始される頃にはドイツ軍では歩兵用火器として信頼を勝ち得た。これに対してアメリカ、イギリスなどでも第一次大戦後からピストル弾を使用したフルオート火器であるサブマシンガンの開発が進められる。
第二次世界大戦時に使用されたトンプソンSMG、ステンガン、M3グリースガンなどがその代表にあげられる。これらは当初、後方部隊や戦車搭乗員などに支給されたが、ピストルよりも10-15cm長い程度のスタイルから市街戦での機銃掃射用火器として使用され、威力を発揮した。特にアメリカ軍が使用した45ACP弾を使用するトンプソンの破壊力は絶大で小型の機関銃、サブマシンガンという呼称が使用され、以降こういった火器全般の名称として定着していく。
戦場では射程距離よりも近接戦の破壊力が優先される場合もあり、第二次世界大戦中には多くのブマシンガンが生産され次第にその立場を確立していく。
しかし1950年代以降、歩兵用ライフルが自動化され歩兵用小火器がボルトアクションやセミオートライフルからアサルトライフルへと交代するにつれてピストル弾を使用したサブマシンガンは急速にその有効性を失っていく。アサルトライフルは従来のライフルの命中精度や射程距離を持ちながらフルオート射撃も可能でサブマシンガンと歩兵用ライフルの長所を併せ持つ火器であった。イギリス軍など一部の国家ではNATO弾として採用された7.62x51mm弾がフルオート射撃に適さないと考えた事からフルオート射撃能力の無いFALを採用した事から、これらの国では小隊に少数のサブマシンガンを配備する事で近接戦時の制圧射撃の能力を補填した。また東側ではいち早く、本格的アサルトライフルであるカラシニコフライフルの配備を開始した事から、急速にサブマシンガンの需要は減少し姿を消していった。
1970年代以降は小口径アサルトライフルが広がるとサブマシンガンの需要はさらに減少して行く。軍用サブマシンガン携行性に優れていた事から一部の特殊部隊などが偵察任務の際に携行する事があったものの、カービンモデルの普及が始まるとすぐにこれに交代していく。
軍用火器としては機能を代用可能なアサルトライフルの登場、射程距離や破壊力などの問題から存在理由の減少したサブマシンガンであったが、ピストルと同じ弾薬を使う点や貫通力が少ない点などから警察や警察特殊部隊など非軍事の分野では需要が高まっていた。
特に1970年代以降はアメリカでの銃犯罪が増加し警察特殊部隊SWATなどが多数創設されていくと室内での射撃に優れたサブマシンガンが主力火器として定着していく。
また近年では対テロ装備としても欠かせない存在となった。この事からサブマシンガンは従来の軍用目的である機銃掃射能力よりも、高い命中精度と携行性、静粛性などを重要視する傾向となった。特に人質のいるハイジャックやバスジャック事件では突入の際に民間人を殺傷しない為に、貫通能力の低いピストル弾を使う高い命中精度のサブマシンガンが必要とされ、ドイツH&K社のMP5シリーズなどが支持されている。
MP5の出現により、現代サブマシンガンの使用目的、機能性はある程度の完成の域に達したが、90年代以降では9mmパラベラム弾のパワー不足から10mmAUTOや40S&W弾などを使ったサブマシンガンも多数開発されている。また、一時反動が強すぎ、警察、公安向けのサブマシンガンには不向きとされた45ACP弾も再び脚光を浴び始めている。さらにピストルにも使用できるまでにダウンサイジングされたライフル弾型弾薬5.7x28mm弾を使用するベルギーFN社製P90なども新たな用途のサブマシンガンとして注目されている。近年では軍用ライフル弾を使用するアサルトライフルの短縮モデル「カービンモデル」との棲み分けが困難になり、防弾ベストを着た犯人に対しても効果を失う事から、軍用、警察用としてはサブマシンガン不要説なども出ているが、その有効性は高く、多彩である事からこれからも軍、準軍事組織、治安部隊などで使い続けられる事だろう。 |