FULTON/G.T. PRICE
ANGLE HEAD FLASH LIGHT
MX-991/U
NSN# 6230-00-264-8261
MX-991/UフラッシュライトはTL-122-Dの後継モデルとして開発されたアングルヘッドフラッシュライトである。第二次世界大戦を通じて改良が加えられたTL-122シリーズを改良し近代化したモデルで、1962年頃に採用された。基本的なデザインはTL-122-Dを踏襲しているが、スペアフィルターコンテナの底に金属製のスイベルリングが追加されている。スイベルリングはTL-122-Aでは採用されていたもののTL-122-Bからは素材がプラスチックになった事もあり、強度面から採用されていなかったが、MX991/Uでは強度の問題が解決され、再度採用されている。製造はFULTON社とG.T.PRICE社が行っており、多数の類似品、模倣品が生産された。ベトナム戦争で使用され、その後、スイッチガードの追加という僅かな改良が加えられただけで、以降21世紀に至るまでアメリカ軍のフラッシュライトとして使用され、グレナダ侵攻、パナマ侵攻、湾岸戦争でも使用された。ABSプラスチックボディは強度が高く、TL-122の基本設計から100年近く経った現在でも幅広い分野で使用されている。
スイッチは伝統的な金属プレス製のスライド方式でOFFからプッシュボタンによる点灯ポジション、点灯ポジションが用意されている。背面には金属フックが装備され、ベルトやサスペンダーに装着し使用する事ができる。
全体的な構成はTL-122-Dを踏襲しており、カラーフィルター固定様に二重になったライトリングと円筒形の本体、スペアバルブコンテナを兼ねたバッテリーカバーにスイベルリングを装備したカラーフィルターコンテナが配置されている。バッテリーはこれまで同様アメリカ軍の使用するDセル(単一形)バッテリーのBA-30が使用されたが、1980年にBA-30の供給が停止すると以降は市販のバッテリーが利用されている。
MX-991/Uは歩兵用装備として支給された他、車載用として戦車や装甲車、トラックなどにも装備された。バリエーションモデルとしてストレートヘッドのMX-993 NSN# 6230-00-270-5418や耐爆モデル、ノンスパークモデルのMX-212/U NSN# 6230-00-161-6422などが供給されている。
ボディ左側面にはU.S.のロゴとモデル名が記載され、右側面にはメーカー名が記載されている。写真はG.T.PRICE社製品で、他にフルトン社(FULTON)モデルも存在する。
MX-991/Uのバルブは標準的なPR6 (0.3A, 0.74W) バルブを使用する。
MX991/UとTL-122-Dの比較。MX-991/U(左)TL-122-D(右)
外見上の大きな違いとしてスペアフィルターコンテナが大型化している点が挙げられる。これはスイベルリングを装備した事によるデザインの変更で、TL-122-A以降で最大のモデルとなっている。またスペアバルブホルダーがこれまでの金属ステーからプラスチック製のホルダーに変更されている。
底面の比較。MX-991/U(左)とTL-122-D(右)スイベルは金属製のワイヤーを成型したものでランヤードなどを連結すれば脱落を防止できる。基部はプラスチックの為、強度を得るために肉厚の構造となった。
MX-991/Uで使用されるフィルターはディフューザー(拡散)、ブラックアウト(遮光)、レッド(夜間視力)、ブルーの4種類。
軍用ライトの場合、複数のフィルターまたはLEDによってそれぞれ専門の使用用途が存在する。光の色はそれぞれに波長が異なり、肉眼に様々な影響を与える。この為、フラッシュライトには目的に合わせた複数のフィルターが装備されている。MX-991/Uで使用される主なフィルターは以下の通り。

フィルターの色・種類 機能・目的
CLEAR(無色) 標準的な透明フィルター。多くのライトで装備されており、場合によっては拡散フィルターが用いられている。フィルター変更機能がある場合、クリアフィルターの上から各種フィルターを被せる事になる。
WHITE(白) BLACKOUT(遮光)フィルター。光量を減衰させ、最低限の明るさを維持する。
RED(赤) 夜間突然の光を受けると肉眼は大きな影響を受ける事から、この影響を最小限にする為に使用される。赤色の光は視力への影響が少ない。機能によってはこれをナイトビジョン(夜間視力)と呼称する事もあるが、現代戦における暗視装置ナイトビジョンやそれを補佐する赤外線イルミネーターのIRとは異なる。
BLUE(青) 直進性と透過性が高く、物体の凹凸の影をシャープに映し出す事ができる。傷や歪みの発見、ルミノール反応検査時にも使用できる。
DIFFUSER(拡散)フィルター 光を拡散させる目的で使用される。より広範囲に照射する場合に使用する。
予備バルブを収納したバッテリーカバー。バッテリーホルダーは初期には金属製であったものの、すぐにプラスチック製に変更されている。
MX-991/Uの分解状態。